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何年ぶりに書いた小説なんだろう。

晶陽。

私の解釈に基づいてるので、3人ともお互いの気持ちには気づいています。

_妹の命はもってあと数ヶ月、或いは_

またそんなことを言うのか。神様あなたは。




宣告を聞いたその日、兄貴とふたりきりの家で、ぼんやりとした夜。

「お前にとって陽毬はなんだ?」

唐突に兄貴が切り出した。質問の意図がわからなかった。

「陽毬は大切な妹だよ。僕たちの大切な妹。」
「それでいいんだな?」
「いいも何も、それ以外に何があるって言うんだよ」

僕の問いかけに、兄貴は何も答えなかった。
これ以上何も言えることはないというように、それきり黙ってしまった。


陽毬は、大切な妹だ。
たとえ、血のつながりはなくても。


マリンスノー



数日が過ぎて。

「この一見美しく見える雪のような粒は…」

今は生物の授業中だった。
今日はドキュメント番組の録画を見せる、と生物教師の多蕗が言った。
教室には暗幕が引かれ、灯りも消されていた。
うす暗く、静かな教室、ぼんやりしたように聞こえる音声。
いつも以上に眠気をさそう授業だ。

僕は頬づえをつき、ぼんやりと画面を眺めていた。
はじまって10分ほどだが、眠気は既に臨界点に迫っていた。
ここのところ、あまり寝ていなかった。そのツケが回ってきてしまった。
しかし、この映像を見た感想を書くまでが今日の授業だ。
それほど生物が得意ではない僕は、こういうところで点数を落としたくはない。

なんとか意識を保って、映像に目を向ける。
海中の映像が映っている。深い青の様な、深い緑の様な色の海。
そこにひらひらと落ちる、雪のような白い粒。
ああ、これは知っている。たしかマリンスノー。
海底にしんしんと降り続く、生物の命。正確には終わった命。

その美しいものの正体が生物の死骸だと知ってもきれいだと思った。
終わった命が、しんしんと降りつもる
その様は、
胸の中に積もる、もう思いだすことのない記憶に似ていると思った。


そのあたりで眠気は臨界点を突破し、僕の意識は朦朧とし始めた。




…ちゃん、晶ちゃん


陽毬の呼ぶ声が聞こえる。
今よりも、少し幼い声の陽毬が、僕を呼んでいる。
声の方を見ると、幼い陽毬が微笑んでいた。

「晶ちゃん、あのね。大きくなったら私、晶ちゃんのお嫁さんになりたい」

ああ、これは昔実際にあったことだ。
僕はなんと答えただろうか。

「だめ?」

陽毬の大きな瞳がじっとこちらを見つめている。

「それは無理だよ陽毬。だって僕たちは兄妹だから」
「そうなの?」
「そうだよ。でも家族はずっと一緒なんだ」
「そっか。晶ちゃんと私はずっと一緒なんだね」

そう、そんな風に答えたかもしれない。



でも、後で気がついたんだ。
兄妹はずっと一緒にはいられない。
いつか陽毬を僕ではない男の人が連れて行ってしまう。



「それでいいんだな?」

唐突に、兄貴に言われた言葉がよみがえってくる。

幼い日の僕は、それをとても嫌だと思った。
他のだれでもない僕が、陽毬を幸せにしたかった。
ずっと陽毬の隣を行きたかった。
本当は、そう思っていた。ずっと。

でも
そんなことが許されるわけないじゃないか。

陽毬が病気になったのは、僕のせい。
陽毬を不幸にしたのは、僕。
不幸にしているのは、僕だ。
僕が高倉家に引き入れてしまったから。

僕が陽毬を好きだなんて、許さない。



きっと神様はそう思ってる。



しんしんと胸の底に思い出が降り積もる。
この気持ちは胸の底に眠らせたままいよう。
深く深く
もう思い出さない。


「さよなら」


つぶやいた言葉は夢だったのか現実だったのか

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