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急に思い立ってまこはる小説を書いてみました。
小説というものを、超絶久々に書いた。





ずっと、隣に天才がいたから、俺は自分が平凡な人間だとわかっていた。
だからいつか普通の恋をして、
両親たちのような平凡だけど幸せな結婚ができたらいいと思っていた。

いつか、恋をして。
俺はまだ自分が恋を知らないと思っていた。

あるとき、放課後、校舎の裏に来てくれと呼び出しをうけた。
ひとつ年下の女の子だった。予想していた通り、告白をされた。
告白をされたことは、今までにもあった。
それと同じような空気を感じたから。
片手で数えられるような、ささやかな回数ではあったけれど。
今までは、好きでもない子とつきあうのはよくないと
断るのには少し勇気が必要だったけど、断ってきた。

けれど

「橘先輩。好きです。付き合って下さい」

彼女は、告白の勢いで俺に抱き付いてきた。

「好きなんです」

抱き付いたまま、もういちどそう言った。
びっくりして、頭が混乱した。
「好き」という言葉がなんども頭を巡った。

好き。そう言われて

はっきりわかるのは、俺は彼女のことが好きではないということ。
それから
自分の中に好きだと思う相手が存在していることだった。
もし、今こうされている相手があいつなら、どんな気持ちになるのだろう。
もし、今「好き」だとあいつに言われたら、どんな気持ちになるのだろう。
結果は、わかってしまった。
知りたくはなかった。
言えるはずがなかった。かなわない恋だった。
平凡ではない恋だった。普通の幸せは望めない恋だった。
絶望的だなと思って、俺はほほ笑んだ。

「好きな人がいるんだ。ごめん」

嘘をつく必要はなかった。
彼女に2,3何かを言われたようなきがするけど、覚えていなかった。
俺はただほほ笑んでいたと思う。
彼女は受け入れてくれたのか、身をひるがえし、視界から去っていった。

きっと彼女にはもっといい男が現れる、そう思った。
俺とは違う。


「わるい、聞くつもりじゃなかった」

すこし間があってから、背後から聞きなれた声がした。
振り向くよりも先に、どんな顔をしているかわかる。

「ハル、いいよ別に」

バツがわるそうに、ふいっと目線をそらしている。
どうしたらいいか分からない時の、ハルの昔からの癖だった。

「探しにきてくれたの?」
「ああ、クラスのやつがここで見たって」

今日は部活がない日だから、一緒に帰ろうと、探しに来てくれたのだろう。

「ごめん。探しに来てくれたんだ」
「いや、別にいい」

目線は相変わらずそらしたまま。
何か言いたいことがあるのだろう。
でも、こういうときの彼はきっかけがなければ、話さない。

「じゃあ、帰ろうか」

そういって、彼の横を通り過ぎようとする。たぶんこのタイミングだろう。

「真琴。おまえ好きなやつがいるのか」

そらしていた目線を向けて、ハルはそういった。
ふだん、ぼんやりしているような目が、
意思を持った時だけ、つよく光を放つ。
ハルの黒目がちの力強い大きな瞳が、俺は好きだった。

「うん」

その瞳に、ほほ笑みを返しながら俺は言った。
嘘はつかなかった。

「だれ、だ」

ハルが何を思ってそれを聞いたのかはわからなかった。
幼馴染だから。親友だから。そうじゃないのかもしれないけれど。

「俺なんかじゃ手の届かない人だよ」

ハルの瞳が悲しげにうるんだ。
やさしい人なんだ。
俺がかなわない恋をしていると知って、心を痛めてくれたのだろう。

「帰ろう、ハル」
「ああ」

それ以上、ハルはなにも言わなかった。
ただひとこと

「お前は、おせっかいだがいいやつだ。だから」

そう言った。
だから、あきらめるなと、励ましてくれたのだろう。

「ありがとう」

でも、ごめんハル。せっかく励ましてくれたのに。
この恋はかなっちゃいけないんだ。

いつか、俺は普通の恋ができるだろうか。
それでもきっと、この絶望という痛みは消えないのだと思う。

だれも君にはかなわない。




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